レンタル彼氏Ⅲ【完結】
泉の体温。

泉が、腕の中にいる。


怖かった。

……泉がいなくなることが怖かった。




「……伊織が無事でよかった」


「……っ、バカじゃねえの!泉だって死ぬかもだったんだぞ?!」


「わかってるけど、私、伊織がいない世界耐えられないよ」


「…そんなん俺だってそうだよ!!」


泣き叫ぶように言う俺の背中を、ゆっくりさすりながら泉はふふっと笑った。


「きっと、“いちか”が守ってくれたんだな。私のこと」


「………いちか?」


「うん…私と伊織の赤ちゃん」


「……………」




ゆっくりと、泉から体を放して泉の顔を見る。

泉は目を細めながら俺を見て、自分のお腹に視線を落とした。




「泉も、伊織も名前に“い”がつくじゃん?だから、いをつけたかったんだよね。
男ならいつきだったなあ」


「……性別までわかってたの?」


「え?わかってないよ。まだ二ヶ月だったかな?そんなだし」


「…じゃあ」


それに泉はお腹に手を当てて、微笑んだ。

その顔はどう見ても、母親の顔のようにしか見えない。
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