レンタル彼氏Ⅲ【完結】
夕飯を食べ終えてから、二人でソファに座ってた時ふいに私が尋ねたんだ。


「よく覚えてたね、そんなこと」


伊織は吃驚しながら私を見る。


「ねえ、そん時レンタル彼氏は何て言うの?」


「……あー、あれね」



その後の言葉を、私はワクワクしながら待った。

あんな、謎めいたレンタル彼氏から何を言うのか。




「…別れようって言うだけ」


「……へ?」



予想外の言葉に、私は目をパチパチとさせる。



「契約破棄っつーかー、恋人破棄みたいな?」


それにくくっと喉を鳴らしながら笑う伊織。


「…それだけ?」


「うん、それだけ。まあ、宣告したことないけど」


「……なんか、普通じゃない?」


「………そんなもんだよ」


「そっか」




あんな、夢みたいなレンタル彼氏の最後は。


まさか、そんなモノで終わってしまうのか。



………でも、そっちの方が確かに現実的なのかもしれない。

突然、別れを告げられて涙をするカップルなんて山ほどいるだろうから。



……なんてったって、私もその一人だったから。
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