レンタル彼氏Ⅲ【完結】
「…レンタル彼氏より、現実の方が残酷かもね」


「………かもな」



“レンタル彼氏って残酷だね”


そう、私は言った。



だけど、夢を見させてきちんと別れるレンタル彼氏の方が余程優しいのかもしれない。



「……俺、もうやりたいとは思わないけど、やってよかったと思ってるよ」


「え?」


伊織は優しく、私の頬を撫でると続けた。



「でなきゃ泉になんか、絶対会えなかっただろうから」


「…確かに」


「色々、遠回りしたけど…思うのはやっぱり俺には泉以外いないってこと。
そう、思えたのはレンタル彼氏のお陰じゃねえかって」


「どう言うこと?」


「もしさ、普通に生きてたら俺、泉の魅力に気付いてないだろうし。
だって、取り立て美人でもないし、急にマンションから飛び降りようとするし」


「いや、あれはっ」



確かに、お母さんの伊織に対する態度にムカついたからだけどさ。


てか、その前の取り立て美人でもないって聞き捨てならないんですが。



「…そんな泉じゃなきゃ、俺無理みたい。
泉が世界で一番最高の女だよ」



……………反則。
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