レンタル彼氏Ⅲ【完結】
康博さんの仕事は、あまり表立ってする仕事ではない。

だからこそ、籍と言ったのだろう。



「ううん、驚いたから我儘言っただけ。
わかってるよ、そんなこと」


「……」


「籍、入れたいです」


「…美佳」


ずっと、ずっと。
康博さんと結婚出来たらって思ってた。


康博さんが他の女に興味ないのはわかってた。

だけど、あんな紙切れだけど。
契約したかったんだ。


「美佳」


康博さんが、テーブルの上に置いていた私の手の上に自分の手を重ねる。

それから、今まで見せた事もないような笑顔を見せた。



「私は幸せだ。
私には美佳がいる」


「康博さん…」


「結婚式は出来ないが、写真はたくさん撮ろう。
好きなだけ撮ればいい」


「…うん、覚悟してね?」


「はは、その前に痩せないとだな」


「う、うるさいですっ!」


くくくっと笑う康博さんを睨みつける。

それから、朝食を食べ終わった康博さんは仕事へ行く準備を始めた。
準備を終えた康博さんと一緒に玄関へと向かう。



「行って来る」


「行ってらっしゃい」


「…美佳、印鑑必要だから、私の分も用意しといてくれ」


「康博さんの?」


「ああ、私の机の引き出しにある」


「わかりました。出しておきます」


「頼む。それじゃあ」


康博さんは微笑むと、私の頬に軽くキスをした。
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