レンタル彼氏Ⅲ【完結】
それに気付いたのは、千里から言われた言葉だった。



“それならいーけど…お前泣いてたぞ”





あの言葉で、その危険な意味に気付くんだ。


携帯を変えようと動いた時も。
それで会わなければ大丈夫だと、思い込んでいた。






もう、泉にどっぷりと溺れていたのにね。




「……愛されたいなんて、言えなかった。
だから、あの時自分の気持ちを伝えられたらそれでよかったんだ」


「………」


「知ってた?
あの時、私伊織のメールに一喜一憂してたんだよ」



心なしか、泉の手が震えている。

俺は抱きしめた腕を更に強めた。



泉はふふっと笑うと、俺の腕を解いて向かい合わせに座り直す。


俺の手を取ると、泉はゆっくりとその手を自分の頬へ持っていく。


その感触が心地いいのか、泉は口元を緩ませた。



そして、ぽつりと言葉を紡ぐ。






「今なら、私悲しいと思ってたこの行為も好きになれると思う」



照れ臭いのか、顔を上げず俯いたまま。



「…幸せだって思えるはず」



泉は瞳だけで俺を捉えると、薄く笑った。
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