レンタル彼氏Ⅲ【完結】
あの時、身を引いてくれた聖の気持ちを踏み躙ることになってしまうから。





【私もありがとう。
聖と過ごした時間、大切なモノだったよ。】






いつか、また会えた時は。


笑い合えるといいな。





パタリと携帯を閉じた私は、家に着くまでその携帯を開くことはなかった。


同様に、聖からのメールもなかった。




家に着いてから、私はお弁当箱を流しに置いて自分の部屋に戻る。


お母さんはいなかった。
買い物か何か、または近所の奥様方とランチか何か。




部屋に入って、上着を脱ぐとハンガーにかけた。
それから、ベッドに向かう途中。



コルクボードに貼られた伊織の写真が目に入った。





あどけない笑顔で子供に囲まれている伊織。

とてもじゃないけど、あんな過去を背負ってるようには見えない。







“俺が、母親を刺したんだ”






きゅうっと胸が苦しくなる。

伊織の過去がどれほど暗かったのか、痛感し過ぎて。


でも。


絶対、絶対に伊織から逃げないから。

私だけは伊織から離れないから。
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