レンタル彼氏Ⅲ【完結】
確認するように言うと、聖はうんうんと、何度も頷く。


「それに」


ふっと、切なげな顔になった聖は。


「…伊織とお揃いだしな」


そう、独り言のように呟いた。



聖がそう簡単に諦められないのを知ってる。
私もそうだったから。

だから、今の聖の気持ちがわかってしまう。


どうしようもない、悲しみ。


こればっかりは、どうしようもないから。

伊織を裏切ることなんて、私には出来なかったし、聖を選ぶことも出来なかったから。


「キム、二番頂戴」


私から木村さんに視線をずらすと、聖はそう言う。
木村さんが頷きながら、用意しますねと奥へと入った。



残された私と聖。

何を話したらいいんだろう。



会話をどうしようか、悩んでいると聖が話しだした。


「いずちゃん、幸せそうでよかった」


「え?」


見上げた聖は、心の底から私の幸せを喜ぶように笑顔を見せた。


「もし、伊織に泣かされてるなら俺が奪ってやったんだけどね。
いずちゃんの顔見たら安心した」

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