レンタル彼氏Ⅲ【完結】
「………」


目頭が熱くなる。

とっても辛いはずなのに。
なのに、こんなにも無垢な笑顔を見せられるだなんて。


聖は…とても綺麗だ。
心がとても。


泣きそうな私は手に持っていたマフラーをぼふっと顔に当てる。


「え?どうしたの?」


「なんでもない!」


「…ふふ」


顔は見えてないけど、聖絶対わかってる。

だから、絶対顔を見せてあげない。


そこに、タイミングよく木村さんの声がする。


「聖さん、包みましたよー」


「あ、今行く」



早く、早く行って。
そしたらどうにか出来る。


固く目を閉じながら祈るように思うと、急に頭に何かが触れた。



「ここで良い子にしておくように。
で、顔見せられるようにしといて」


「!!」


くすくすと、聖の笑い声がする。
マフラーをゆっくりと、おろして少しだけ顔を出す。

そこから聖を恨めしそうに見つめた。


楽しそうに聖は笑うと、踵を返して店内に入って行った。


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