レンタル彼氏Ⅲ【完結】
そんな泉だから、俺は惹かれたんだよ。


それからたんぽぽ院に着くまで、泉は小さく嗚咽を漏らすだけで何も言葉を発しなかった。


折角、メイクしたのに台無し。
たんぽぽ院に到着した時、俺は泉の目元を丁寧にメイク落としのシートで拭き取ってあげた。



「お泊まりする為に持って来ててよかった」


俺がシートで拭き取ってると、泉は目を閉じながらそう言った。


「使うタイミング違う気するけど、はい終わり」


「ありがとう。
いいの、泣かせたの伊織なんだから」


「……ふははっ」


「また笑ってー!」



目を開けて、すっかり幼くなった顔で泉は頬を膨らませた。

素っぴんでいると、初めて会った時を思い出させる。
過去に戻ったみたいだ。




「あ、あそこにいるの鈴恵さんじゃない?」


俺が泉を目を細めて見ていると、泉はさっさと一人で歩きだした。

俺もそれに倣って歩きだす。




先に泉は鈴恵さんの側に駆け寄り、話をしていた。


鈴恵さんに俺が声をかけようとするよりも先に


「にぃにっ!」


そうやって俺に声がかかった。
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