レンタル彼氏Ⅲ【完結】
「…あん、しょう、まさ」


俺の姿を見つけて部屋の中から走って来たらしく、皆真冬とは思えないほどの薄着だった。

何か羽織るより先に行動してしまうのは、子供のいいとこでも悪いとこでもあるのだろう。



「そんな格好じゃ風邪引くよ、中に行こう」


「にぃに、帰って来たの?」
「にぃにに見て欲しいのがあるの」


興奮してる三人は俺の言葉を遮りながら口々に話すのを、俺は頷きながら相槌を打つ。


「伊織っ」



子供達に引っ張られる俺を泉が呼ぶ。

振り向くと、その隣には懐かしい笑顔を見せる鈴恵さんがいた。



鈴恵さんは俺の目を見て、ゆっくり口を開く。


「伊織、お帰りなさい」


「……………ただいま」


そのやり取りを泉は満面の笑みで俺を見ていた。






“さよならは、言わない”

“伊織、行ってらっしゃい”



そう、言ってくれた鈴恵さんは健在していて、いとも簡単に俺の涙腺を刺激するんだ。



今日は涙を見せないと決めていたから、わざと明るく子供達に話し掛けることで紛らわした。
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