レンタル彼氏Ⅲ【完結】
「ふ、ははは」


携帯小説を読みながら、面白くて思わず笑いが零れる。
こんなとこ、伊織が見たらドン引きだろうな、なんて思いながら。


それを見ていたらいつのまにか時間は経っていたらしく、外で階段を上がる音がした。


…まさか、伊織…?

ドキッとした私は寝っ転がっていた体を慌てて起こした。



それから、真っ直ぐ玄関を見る。


ガチャリと、音がして鍵を開けるとドアノブが回った。




黙ったまま伊織は部屋の中に入ってくる。

それから、靴を見てバッと顔をあげた。



「い、ずみ」


私の名前を呼ぶ。
驚いた顔が、何故か嬉しい。


「伊織、早く来すぎちゃった」

へへっと笑うと、伊織は顔を歪ませる。


靴を履き捨てるように脱ぐと、伊織は私を思い切り抱きしめた。

がむしゃらに。

ただ、強く。



その伊織に胸が苦しくなる。
自然と、目頭が熱くなる。



「…夢、じゃなかった」


もう、その言葉を聞いた瞬間。

ぎゅうぎゅうと、胸が締め付けられた。

呼吸できないぐらいに。
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