レンタル彼氏Ⅲ【完結】
「……い、伊織?」


「んー?」


チキンをもぐもぐしながら、伊織が返事をする。



「あのね、渡したいモノがあるの」


そう言いながら私はカバンからあの包みを取り出した。

伊織は黙ったまま、私の様子を見つめる。



「何が欲しいとかわからないし、気付けば伊織の好みとか知らなくて。
でも、たまにしてるネックレスにも合うかなと思ったからこれにした」


ゆっくり伊織へ包みを差し出す。

それを伊織は静かに受け取った。




「………俺」


黙ったままの伊織が、ぽつりと呟くように言う。



「…何も用意してない…」


「あっ、いや何か期待して渡したんじゃないから!
私がただプレゼントしたかっただけなの」


慌てて伊織に言うが、また伊織は包みを見たまま黙り込んだ。



「…本当、気にしないで開けて?」


窺うように言う私を一度見てから、その包みにゆっくり手をかけた。



丁寧に包みを剥がしてゆく。

私はドキドキしながらそれを見守る。



…どうか、伊織が気に入ってくれますように。
ただ、そう祈りながら。
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