愛しき人々
本当はもう泣きたくもナイのだが、さらなる同情を引く為にテーブルに突っ伏して激しく泣き続けてやった。

数分たった頃。
肩に柔らかく手が置かれる。


―ほんとうにオレがわるかった。
 ゴメンナサイ…


父親に諭され、先に折れてきたのは次男の方だった。

顔をあげ振り向くと、何をどう諭されたのか、次男の顔からは憮然とした表情は消え、なんと目には涙まで浮かべているではないか。

…私の中で全てが氷解した。
さっきまでの戦意は、次男の素直すぎる一言と本心からの涙で、すっかり消し飛んでしまった。

数分前とは打って変わり、今はもう次男が愛しくてたまらない。


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