Kissしてダーリン[短篇]
グイっと私の腕を引っ張り、外へと連れ出す。
掴まれた腕が痛い。
敦の横顔が怖い。
「…乗れ。」
「い、嫌…」
車の前。
乗りたくない、嫌!
別れたくないもん!
この車に乗ってしまったら、すべてが終わるような気がした。
「いいから、乗れって」
「嫌!」
掴まれている腕を振りほどこうと必死になるが、なんの意味もない。
がっちり掴まれた腕は敦に握られたまま。
「真央!」
「…ふぇ、」
涙、さっきの溜まっていた涙と今の涙が合わさって、目からは大量の水。
「頼むから。な?」
少し優しい口調で、私の背中をゆっくりと押す。
……もう逃げられない。
観念した私はゆっくりと助手席のドアを開いた。
バタン…
乗り込むと同時にドアが閉まった。
敦と2人きり。
いつもなら幸せ絶頂の時間なのに、今はどん底。
逃げ出したい衝動に駆られていた。