Kissしてダーリン[短篇]



シーン…

気まずい雰囲気が私達を包む。








「…なんでだよ」






最初に口を開いたのは敦。






「え?」








シートに背をつけ、タバコを吸おうとしている手を止め、私のほうをゆっくりと見る。



少し茶色の瞳に私が写る。








「んで、昨日勝手に帰った?」









何で?
そんなの、敦が一番分かってるんじゃん。







中村先生が



……好きなんでしょ?






私は、要らないんでしょ?









「そ、それは…」




「……なんで、俺の目見ねぇの?…なんで、今日、俺の部屋、来ねぇの?」













敦の声が少しずつ擦れていくのが分かった。









「真央は…俺のこと好きじゃねーの?」







ズキン…





胸が張り裂けそう。










私は今でも敦が好きだよ?
好きすぎて苦しいくらいに。







…でも敦は違う。
私より、違う人がいいんでしょ?








それはもっと苦しいの。











「………。」










< 36 / 44 >

この作品をシェア

pagetop