Kissしてダーリン[短篇]
シーン…
気まずい雰囲気が私達を包む。
「…なんでだよ」
最初に口を開いたのは敦。
「え?」
シートに背をつけ、タバコを吸おうとしている手を止め、私のほうをゆっくりと見る。
少し茶色の瞳に私が写る。
「んで、昨日勝手に帰った?」
何で?
そんなの、敦が一番分かってるんじゃん。
中村先生が
……好きなんでしょ?
私は、要らないんでしょ?
「そ、それは…」
「……なんで、俺の目見ねぇの?…なんで、今日、俺の部屋、来ねぇの?」
敦の声が少しずつ擦れていくのが分かった。
「真央は…俺のこと好きじゃねーの?」
ズキン…
胸が張り裂けそう。
私は今でも敦が好きだよ?
好きすぎて苦しいくらいに。
…でも敦は違う。
私より、違う人がいいんでしょ?
それはもっと苦しいの。
「………。」