Kissしてダーリン[短篇]
一瞬、開こうとした口はすぐに閉じた。
「…答えろよ。」
いつも強い気な敦が、弱弱しい声で言う。
なんでそんな顔するの?
ねぇ、なんで泣きそうなの?
敦の手が私の頬を撫でようとゆっくりと近づく。
バジッ
反射的にその手を払う。
「さ、触らないで…」
「ま、お?」
敦の目が少し見開いた。
他の人のことが好きなくせに、私のことなんて好きじゃないくせに。……優しくしないでよ。
「……好きでもないくせに」
「は?」
敦の動きが止まる。
「私のこと、好きでもないのにこんなことしないでよ!」