子悪魔ライアス★下克上～Der Traum des Teufels～

イヴファルト -上級天使-

■天界から魔界へ

上級天使イヴファルトは天界から魔界へと自らの意志で堕天してきた。
自らの意志での堕天であり、かつ、魔界を天界の支配下に置くための布石として送り込まれたので翼は失っていない。

「あっ…痛っ……。」
イヴファルトはうめき声をあげる。
「転移の魔法は着地が難しいのね…。ここはどこかしら?」
イヴファルトは目の前に広がる光景を見つめる。
白を基調とされた、広い場所だった。
「本当に魔界かしら…。」
天界の城とあまり変わらない景色を不審に思っていたその瞬間。

イヴファルトにとっては見知らぬ悪魔たち…ライアス達が転移してきた。
「え?」
「あれ?」
「ここは?」
「ごめんね、サキマ殿のプライドをかなり傷つけちゃって殺されかねないところだったから転移したんだ。」

「ここどこ?魔界のイメージからあまりにもかけ離れた場所なんだけど…。」
イヴファルトと同じように白亜の宮殿といった様子に違和感を持つ者が1人いた。気配から察するに、人間のようだ。

イヴファルトは黙って、突然現れた者達を見るともなしに見続ける。
「ルファン様の城…かな?、私、意外とノア殿を頼ってるのかも…。」

「いや、いいんだ。俺たちもあの屋敷はやべぇって話してた真っ最中だったんだ。」

ルファン様…?!
イヴファルトはかつてここに姉のルファンがいたということを直感的に悟った。

「あなたたち…。ここは…ルファンの城なの?」

「「「「え?」」」」
突然、見知らぬ女…しかも悪魔ではなさそう…に声をかけられてライアス達は振り返る。

長い銀髪に紫色の目でふわりとした白い服を着た白い翼の女がいた。

「天使か?!」
イヴファルトから見たら白髪の悪魔…ドリウスが驚いて距離を取る。
「くそっ…この時期を狙って魔界を制圧するつもりか!」
イヴファルトから見たらまだ子供の悪魔…ライアスは色違いの翼を瞬時に出し、上方向へ距離を取る。
「待ってください、落ち着いてください、話を聞いてくださいっ!」
長い銀髪の女が静かな声だが、有無を言わさぬ調子で臨戦態勢に入った悪魔一行に声をかける。

悪魔3人は身構えながらも距離を取りつつ、イヴファルトを囲む。
人間1人はどうしたらいいのかわからない様子だった。
よく見れば人間は天界の加護を受けた剣を2本、肩から下げている。
どうやら悪魔狩りのようだ。