子悪魔ライアス★下克上~Der Traum des Teufels~
ライアス達は結局ルファンの城へと帰ってきた。
「ここは…。悪魔達は近寄らないのか?」
ノア以外がいない城を、イブナクが不思議に思って聞く。

「先代の魔界の神は天使だったからな。」
ドリウスが答える。
「天使の魔力が混ざっていて、近寄りづらいのよ…。純血の悪魔にはちょっとツライわ。」
アフストイがドリウスの言葉に補足する。

「ライアス、手、見せて。」
ドリウスはライアスの手首を掴むと、ライアスの手のひらを眺める。
赤く腫れているだけだ。
「天界の加護が弱かったのかな、この斧。」
「ちょっ、ライアスちゃん、そんなもんは捨てるかイブナクにあげるかしなさいっ!」
アフストイが慌ててライアスから霊銀の斧をとりあげる。
「っ…!」
悲鳴はあげなかったものの、アフストイは霊銀の斧を取り落とす。
アフストイの手も赤く腫れている。

「あまり長い間持ってたら、アバドンみたいに手を灼かれるちゃうね…。」

イブナクは霊銀の片手斧を拾い、客室と思しき部屋に勝手に入る。
「血を洗い流してよく手入れしたらまた使える。」
イブナクはそう言う。
「でも、ライアスも上級悪魔。手を灼かれなかったのは単なる運の問題なのかはわからない。」
イブナクは解せない、といった表情で片手斧の手入れを始める。

「なんでヤケドが軽かったのかなんて知らね。考えるのめんどくせぇし、もう使わねぇよ。」
そう言いながら、ダークの返り血を洗い流すために、ライアスは風呂場へと行ってしまった。
数分後、ライアスは返り血をさっぱりと洗い落とし、部屋に戻ってきた。
ライアスは早速、客室のベッドに勝手に潜り込む。

ドリウスとアフストイはもう少し、ライアスと話したいことがあったのだが間もなく寝息が聞こえてきた。

「ホントライアスちゃんは最近眠たがりだね~。」
アフストイはそう言いながらライアスの布団に潜り込もうとしたがドリウスに長い髪を引っ張られて止められた。
「ドリウス君もライアスちゃん好きなの?」
ドリウスは何も表現しないニヤニヤとした表情を返すだけで、何も答えない。
「ちぇ~今日も寂しく一人寝か~。」
アフストイは違うベッドに潜り込み、こちらも疲労が激しかったのかすぐに眠りに落ちた。

部屋の中は静まり返っていた。
ライアスと入れ替わりに風呂場へと移動したイブナクが霊銀の片手斧を手入れする音だけが聞こえる。

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