子悪魔ライアス★下克上～Der Traum des Teufels～

イブナクが霊銀の斧の手入れを終えて部屋に戻ると、眠っているアフストイとライアス以外は誰もいなかった。
ドリウスはどこに行ったのか考えながらも、ライアスの寝顔を覗きこむ。

可愛い…?綺麗になってきたかも…。

ライアスが起きてる間はライアスの顔を見つめるなんてできないイブナクであった。

突然、ライアスが目覚める。
イブナクは驚いたが、ライアスは特に驚きもしなかった。
イブナクが赤面して固まっていると、ライアスのほうから話しかけてきた。

「同族に、誤解されちゃったみたいだな。俺のせい?」
ライアスはイブナクにそう聞いた。
「誰のせいでもない。悪魔に身内を殺された者は僕の話なんか聞いてくれない。」

「身内を殺された気持ちっていうのが、わからないんだ、俺は。」
ライアスは不思議そうにイブナクに言う。
「悪魔だし。」
イブナクはライアスに【人間の気持ちを理解すること】を求めてはいない。
ただ、知っておいてほしいとは思った。

「人間は、生まれてきた直後はか弱い存在だ。」
「一般的には父親と母親がいる。その2人に育ててもらう。」
「アーヤ陛下の国の法律では20歳を成人としている。」
「父親や、母親や、生まれてきた子供、一緒に生まれてきた兄弟姉妹が殺されると人間は一般的に悲しむ。」
「人間に殺されることもあるけど、悪魔に殺されることもある。」
「悪魔の力にもよるけど、だいたいの人間は悪魔には勝てない。悪魔と出会ってしまったら、被害を受けるのは必至。」

ライアスは黙ってイブナクの説明を聞いて、一言「そうか。」と言葉を返した。

面倒くさがりで人間界のことになど興味は無かったけれど。
悪魔というだけの理由で攻撃され、警戒され、悪魔狩りに拘束される理由がわかった気がした。
あくまでもわかった気になっただけだ。ライアスは悪魔だから。人間とは考え方が違うから。

「ベッドが足りないのか?」
突然話題が変わり、イブナクは何が何だかわからなかった。
「どけという意味で俺を眺めてたんじゃないのか?」
「え、いや、その…。」
イブナクは顔を真っ赤にするが、ライアスは気づかなかった。
「ベッドないならまた一緒に寝よう。」
「え、あ。う…うん…。」
おとなしくライアスの言いなりになったイブナクだった。

ライアスは何も考えずすやすやと眠ってしまった。
イブナクもライアスの温かさが心地よくてすぐに眠り込んでしまった。
イブナクもイブナクなりに、同じ人間から攻撃を受けたことにショックを受けていたし、ダークとの対決で疲れていたのだ。