子悪魔ライアス★下克上~Der Traum des Teufels~
ダークが去ってしばらく経った。

ドリウスとイブナクとスノーが部屋に戻ってくる。

ライアスはまだ目を覚ましていない。

「ドリウス、水鏡、お願い。」
イブナクがドリウスに水鏡の魔法を使ってくれと依頼する。
「アーヤへの報告か。」
「うん。」
イブナクは目を伏せる。

ドリウスが水鏡の魔法を使うと、イブナクは淡々と事実だけを告げる。
「ふむ。しかし余は今魔界にいるのでな。もう定期報告は不要だ。」
アーヤの声がその場にいる全員の頭の中に響き渡る。
「国王不在ってまずくありませんか。」
イブナクが至極冷静にアーヤにたずねる。
「毎日転移でこっちで志願者を指揮して昼には国王としての仕事をやっておる。案ずるでない。」
アーヤの国の国政は滞ってないらしい。

「それに、余はサキマとも決裂したからな。ゲザっても許してくれぬとは心の狭い輩だ。」
「王がそんなに簡単に土下座していいものではないと思うのですが。」
イブナクは冷静にアーヤを諌めている。
「傲慢、っていうくらいだから、戦いを邪魔されたのがよほどむかついたんでしょうね。」
スノーはたいして驚きもせず事実を受け止める。

「さてライアスが眠ってる間どうしようかしらね。」
スノーがぼやく。
「魔法でも覚えるか?」
ドリウスがスノーに聞く。
「それもありかしらね、人間のときと違って魔力があるみたいだから。」
スノーはライアスと血の契約をするまで、我を忘れて近づく者全てを殺していたのだ。
元人間なので、悪魔が使える魔法は全く知らないし、魔界の知識もなかった。

「僕は散歩してくる。」
イブナクはそう言うと部屋から出ていった。

イブナクの足音が遠ざかっていく。
足音が聞こえなくなった頃、スノーがつぶやく。
「一人になりたかったみたいね。」
「さあ?人間の気持ちってヤツはよくわからないからな。」
イブナクだったら一人になっても特に問題はないと思ったドリウスはスノーを学習室に連れていくことにした。
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