もう叶わない
ふわりと上空を移動する雲を眺めながら、グラスの中の酒を揺らす。
何もする事がなく、ただ廊下を歩いていると侍女が忘れたのか中身の残る酒瓶が置いてあった。
香る茶の液体を一気に飲み干し、もう一度上空を仰ぐ。
青く澄み渡った空は、あの国にも繋がっていて。
不意に眉間に寄った皺に気付き、グラスに酒を荒くつぐ。

何が忠誠だ、くそったれ。

一息に度数のそれなりに高い酒を飲み干すと、流石に足元がふらついた。
悪酔いは禁物だ、とどこぞの誰かが言った言葉を思い出す。
そんな言葉を馬鹿にするようにもう一度酒をあおると、遠くの空でラーブルが高く鳴いた。

―――皆がこの城は崩れると噂する。
実力ではなく血筋で継ぐこの王国の後継者は、裏も表までも知らないガキだ。
長年の歴史の為か侵略しようとする国さえいないものの、この調子ではいつ自爆するかしれない。
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