悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
灯里の頭の中が一瞬で真っ白になる。
灯里は呆然と都筑さんを見た。
都筑さんの言葉が頭の中で消化しきれない。
「えっ……?」
「火曜から有給消化に入ってるわ。もう会社に来ることはないはずよ」
都筑さんは淡々と冷静な声で言う。
灯里は呆然としたまま、震える口を開いた。
「た、退職って……えっ……」
「退職届は先月末に受理されてるわ。あまり詳しくは知らないけど、東京に行くって言ってたわね……」
都筑さんはスケジュール帳を開き、パラパラとめくった。
今月のページを開いたところで手を止め、眺めながら続ける。
「うーん、詳しくは思い出せないけど……確か23日の昼の新幹線を予約したとか言ってたような気が……」
「……」
「って吉倉さん、あなた何も聞いてないの? あんなに仲良かったのに?」
都筑さんの言葉につっこむ余裕もなく、灯里は固まったまま立ち尽くしていた。
――――もう、会社に来ることはない。
――――東京に行く。