悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
4.強烈な男除け
2月。
灯里は電機設備課の自席で見積書の作成作業を行っていた。
これから3月にかけて商事部は追い込みの時期となる。
灯里以外の課員はほぼ毎日営業に向かい、書類や事務的な部分はほとんど灯里が処理している。
と、そこに経理部の香川さんが通りかかった。
「あ、吉倉さん」
香川さんは伝票を片手に灯里の方へと歩いてくる。
その艶やかな髪、鮮やかなルージュは前と変わらず『大人の女性』といった印象だ。
「昨日出してくれたこの振伝なんだけどね。電機課から追加でもう一項目増やしてほしいって言ってきたの」
「あ、はい」
「内容はメールで送るから。悪いけど修正してもらっていいかしら?」
伝票はまだ経理部の処理前の状況らしい。
経理部で処理してしまうと、その後の修正は少し手間になる。
灯里は頷き、伝票を受け取った。
と、その耳に香川さんがそっと顔を寄せる。
「……あれからどう? 水澤君とは順調?」
「……っ」