悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
香川さんは手をひらひら振って廊下の方へと歩いていく。
あれから玲士は忙しく、あまり会えていない。
会えたとしても土曜か日曜の半日程度で、丸一日一緒に過ごすということはない。
灯里は昨日の夜の玲士からの電話を思い出した。
『……え、午前中だけ?』
土曜の昼過ぎまでなら空いてると言った玲士に、灯里は思わず言った。
『でもそれだと、朝早い新幹線に乗って、昼過ぎに帰るって感じになるよ?』
『そうなるね』
『それならあたしが東京に行くよ。あたしは土曜、特に用事ないし……』
『だめ』
さくっと玲士は言う。
灯里はぐっと携帯を握りしめた。
付き合い始めてから、灯里が東京に行ったのはクリスマスの時の一回だけだ。
その後はいつも玲士が灯里の町まで新幹線で来ている。
灯里が東京に行くと言っても玲士はなぜか頑なに断る。
『いいの。おれが会いたくて行くんだから』
『でも……』