悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
灯里は黙り込んだ。
――――毎回これでは、玲士に悪い。
忙しい合間を縫って会いに来てくれるのは嬉しいが、それが続くと自分が玲士の負担になっているような気がする。
押し黙った灯里に、玲士はいつもの冷静な声で告げる。
『とにかく。今度の土曜、10時に改札で』
『……わかった』
灯里は電話を切り、はぁと息をついた。
遠距離恋愛の切なさが身に染みる。
去年までは会社で会えていたのに、離れてから恋が始まるなど灯里は予想もしていなかった。
それは玲士も同じなのだろうが……。
ふと手元のスケジュール帳を開くと、今週は2月の第二週だ。
来週はバレンタインデーがある。
今年は2/14が平日なので、渡すとしたら今週末しかない。
悪魔にチョコなど、当たり前だがこれまで渡したことがない。
やはり手作りだろうかと思いつつも、玲士のあの料理の腕前を考えるに、下手なものを渡したら冷笑されそうだ。
『何コレ? 食べるものなの? 黒い固まりにしか見えないんだけど』
とかフツーに言いそうだ。
それでもやはり市販のものではなく、手作りのものを渡したい。
――――今日、材料を買いに行こう。
灯里は決心し、スケジュール帳を閉じた……。