悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
5.バレンタイン
金曜の夜。
灯里は自宅のキッチンでチョコを相手に格闘していた。
板チョコを割って湯煎で溶かして、材料を混ぜて、こねて……。
作っているのはシンプルな丸いトリュフだ。
混ぜて丸めるだけならできるだろうと思ったのだが、チョコは温度管理が難しくなかなか思ったようにいかない。
「あら、灯里。こんな時間に何作ってるの?」
キッチンに現れた母が興味深げに灯里の手元を覗き込む。
まずい、と冷や汗をかく灯里の横で母は眉根を寄せた。
「……チョコレート?」
「あ、ちょっと……食べたくなって」
灯里は誤魔化すように慌てて言ったが、明らかに不自然だ。
母はそんな灯里を探るようにじーっと見つめた後、はぁと肩を竦めた。
「あんた、そろそろちゃんと言いなさい?」
「……」
「付き合いを反対するつもりはないわ。お父さんはどうだかわからないけど。……どこの人? 何やってる人なの?」
やはり親としては娘の交際相手は気になるらしい。
灯里は口を開きかけたが、思い直して口を噤んだ。