悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
「水澤くん、どうして……」
灯里は呆然と呟いた。
――――もう、彼に会えないのだろうか?
『確か23日の昼の新幹線を予約したとか言ってたような……』
都筑さんの言葉が頭の中でぐるぐると回る。
23日というと、……今日だ。
壁に掛かった時計を見ると……。
今は、11時半。
「……っ!」
灯里は踵を返し、突然駆け出した。
階段を駆け下りて2階の電機設備課のフロアに飛びこむ。
フロアにいた社員達が何事かと振り返ったが、灯里は気にすることなく席に戻って鞄を取った。
向かいにいた山岡課長が驚いた様子で灯里を見る。
「あ、灯里ちゃん?」
「すみません課長。早退させてくださいっ」
灯里はコートも着ぬまま、鞄だけを手にし会社を飛び出した。
会社の門を出たところで通りかかったタクシーを手を上げて呼び止める。
「駅までお願いしますっ」
今は考えている余裕などない。
衝動に突き動かされるまま、灯里はタクシーに飛び乗った……。