悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
<side.玲士>
12:30。
玲士は駅で灯里と別れ、東京行の新幹線に乗った。
予約しておいた指定席に座り、コートを脱いでフックに掛ける。
――――灯里と付き合い始めて2か月。
会えるのは2週間に一度程度で、しかも会える時間はごく僅かだ。
玲士はシートの背に寄りかかり、灯里の顔を思い出した。
本当はもっと灯里と一緒にいたい。
灯里が東京に来れば会える時間はもっと長くなるのだろうが、灯里に東京に来てもらうわけにはいかない。
――――帰せなくなるからだ。
「灯里……」
見送られる辛さより、見送る辛さの方が遥かに辛い。
あのクリスマスの日、玲士はそれを心底思い知った。
灯里を見送った後、マンションに帰った玲士は部屋に残る灯里の痕跡に心が軋むような気がした。
灯里が使った食器、灯里が着た服、そして灯里と一緒に寝たベッド……。
部屋のどこを見ても灯里を思い出してしまう。
玲士は灯里との想い出が溢れた部屋の真ん中で、なす術もなく立ち尽くした。
もし今度また灯里が来たら、自分は灯里を閉じ込めてしまうかもしれない……。
一度天国を知ってしまった今、もう知る前には戻れない。