悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
「はぁー……」
灯里は手にしていた缶コーヒーを置き、大きく伸びをした。
じっと資料を見ていると肩が凝る。
灯里は肩をコキコキと鳴らしながら、この休憩室で玲士といろいろ話したことを思い出した。
あの頃も玲士は有能だなと思ってはいたが、今は有能というだけではなくて、どことなく『大人の男』という雰囲気がある。
東京に行った玲士は明らかに雰囲気が変わった。
自分に対する自信や、仕事にやりがいを持って新しいことにチャレンジする姿……。
そして自分を見守る視線や、包容力……。
灯里は玲士に会うたびに彼に惹かれ、それと同時に自分が置いてかれているような気分になる。
東京に行った玲士はこれまでの飄々とした雰囲気は鳴りを潜め、今は本気で仕事をしている。
その姿を見ていると、同い年なのに年上っぽく感じることがある。
付き合い始めて玲士のいろいろな面が見えてきたからというのもあるのかもしれない。
昔、玲士は灯里のことをミジンコと揶揄していたが……。
今はそうかもしれないと思ってしまう。
東京でバリバリと仕事する玲士に比べて、自分はこの地方都市で自分にできる仕事をするしかない……。
自分を卑下しても仕方ない、自分にできることをするしかないのだから……。
と思っても一度思ってしまうと頭から離れない。