悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
「もしもし?」
『おれ。起きてた?』
聞き慣れた低いテノールの声。
玲士だ。
3か月前までは、玲士とこうして夜に電話をするなど思ってもみなかった。
「あれ? 今日は確か出張じゃ……」
『そ、今出張先。香港のホテルにカンヅメになってる』
灯里は大学の卒業旅行で台湾に行ったきり、海外に行ったことはない。
けれど玲士は今の会社に入社してから既に数回海外出張に出かけている。
「香港か~。いいなあ。香港ってどんな感じ?」
『溶けるかもね、お前。まだ三月なのにありえない暑さだよ』
「……」
『食べ物は面白いのが多いけどね。日本では売ってない食材もいろいろあるよ。お土産にいくつか買って帰ろうか?』
日本で売っていない食材……。
なんだか嫌な予感はするが……。
灯里はちょっと聞いてみた。