悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~




「へぇー。たとえば?」

『猪紅っていう、豚の血を固めたものとか』

「……やっぱいい」


それは食材なのか、それとも儀式用なのか?

あまり突っ込んで聞くといろいろまずいことになりそうだ。

黙り込んだ灯里の耳元で、電話越しに玲士がくすくすと笑う。


『こっちの市場はなかなか面白いよ。肉屋で鳥を注文するとその場で絞めてくれるんだ』

「……」

『市場を歩いていると、突然頭を落とされた豚の死骸が転がってきたりする。なかなか日本では見られない光景だよ』


灯里は思わず絶句した。

それはまさに『血の饗宴』だ。


多分そんな光景の中でも玲士は平然と歩いているのだろう。

むしろその光景に溶け込んでいるかもしれない。

――――悪魔だし。魔王だし。


灯里はぞっとしながら口を開いた。

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