悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
それに……。
『お前が、好きだよ』
玲士の真剣で切ない瞳が脳裏に蘇る、。
あの時の玲士の瞳や玲士の声を思い出すとなぜか胸が痛くなる。
いつも虐げられてきたが、玲士は灯里が本当に困っているときには助けてくれた。
――――厳しさと冷たさの裏にある、優しさ。
ふと見せた、優しい表情がなぜか忘れられない……。
玲士は一人暮らしだと聞いたが、これまでクリスマスや正月はどう過ごしてきたのだろう。
……と思ったところで灯里は慌てて首を振った。
「ってあたし、なんであいつのこと考えてんだろ……」
クリスマスは奴にとっては天敵の祭典だ。
恐らく生贄を前に黒ミサでもしてるに違いない。
正月も奴にとっては異国の神の祭典だ。
悪魔が神社にお参りしたり、角松を立てたり、お雑煮を食べたりする姿は全く想像がつかない。
「そもそも人間じゃないしね……」
灯里は振り切るように顔を上げ、歩き出した。
悪魔のことはいくら考えてもわからない。
灯里の知らないことが多すぎるのだ。
冬の冷たい風が灯里の頬を撫でて吹き過ぎていく。
灯里は街角のイルミネーションを眺めながらゆっくりと歩き出した。