悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
3.お前がいたから
ドアに埋められた窓ガラスの向うを、風景が通り過ぎていく。
灯里は玲士の胸に寄りかかり、窓の外を流れていく景色を眺めていた。
――――東京までは3時間。
ずっとデッキに立ちっぱなしというわけにもいかないが、今はなんだか離れたくない。
そう思っているのは玲士も同じらしかった。
寄りかかった灯里の髪を、玲士の指が愛しげに梳く。
「しかしお前、本当に後先考えずに行動するよね……」
低いテノールの声はいつもと同じ響きだが、……少し甘い。
灯里は玲士の腕の中でキッと顔を上げ、口を開いた。
「しょうがないでしょ! 時間なかったんだからっ」
「メールとか電話とか、いろいろ方法はあるでしょ。何のための道具なの、それ?」
「……っ」
灯里はうっと言葉を詰まらせた。
玲士の言葉は正論過ぎて何も言い返せない。
確かに考えてみればそうだが、あの時は焦りのあまり電話を掛けるなど考えもしなかった。