悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
灯里は玲士に腕を引かれながら改札を出、そのまま地下鉄のホームへと向かった。
この時間はまだ帰宅ラッシュではないため地下鉄もそんなに混んではいない。
二人はやって来た地下鉄に乗りこみ、空いていた座席に腰を下ろした。
座って一息ついたところで。
灯里は隣に座った玲士の顔を覗き込んだ。
「ところで水澤くん」
「なに?」
「なんで会社辞めたの? ……あたし、全然知らなかった……」
と灯里が言うと。
玲士はくすりと笑い、灯里を見た。
「お前には言ってなかったからね」
「なんで?」
「それは秘密」
玲士は足を組み、目を細めて笑う。
悪魔が秘密という時はヘタに突っ込まない方がいい。
と思いつつも釈然としない思いが広がる。
「でも……なんでこんな、突然……」
灯里は呟き、喉を震わせた。
もし今日都筑さんに聞かなければ、玲士とは二度と会えなかったかもしれない。
灯里の瞳が微かに陰る。
玲士は目を和め、灯里の頭をさらっと撫でた。