悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
―――― 一時間後。
灯里はコキコキと肩を回しながらキッチンの方へと向かった。
調理器具や皿は既に片付けられ、残っているのは空の段ボールだけだ。
人工大理石の天板が置かれたキッチンはシンプルかつ機能的で、調理器具も食器類もナチュラルな感じで統一されている。
近くにあった木のお皿に触れてみると、とても手触りが良い。
数は多くないが、厳選したものを置いてある。
そんな印象だ。
「そこ。割れ物が置いてあるから下手に触らないようにね?」
洗面所の方から玲士の声がする。
洗面所も広く、どうやらリネンスペースもあるようだ。
本の多さに比べるとキッチンやランドリースペースに置くものの数は多くないが、どれも洗練された良いものを使っている。
100均やスーパーで売っている量産品とは明らかに違う。
これまで全く謎だった玲士のプライベートを垣間見、灯里は内心で胸が高鳴るのを感じた。
――――とても『らしい』感じはする。
すっきりと整頓された部屋は、怜悧で冷静な玲士の雰囲気とどこか通じるものがある。
灯里は部屋の中を見渡しながら、書斎に戻って作業の続きを始めた。