悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
20:30。
乾燥が終わり、灯里は事務服に着替えた。
服を整え、鞄を持ち上げた灯里に玲士がコートを差し出す。
「これ、着ていきなよ。今度会うときに返してもらえばいいから」
「へ? 今度って……」
「年明けの15日くらいにそっちに一旦帰るつもりだから。また日程決まったら連絡するよ」
玲士の言葉に灯里は戸惑いつつも頷いた。
これはいわゆる遠距離恋愛というやつだろうか?
まさか自分が『遠恋』をすることになるとは、半日前までは思ってもみなかった。
けれどこれから玲士とプライベートで連絡を取ることになると思うと、心がじんわりと暖かくなる。
「駅まで送るよ、灯里」
「え、いいよ。歩いて5分だし……」
「ミノムシが歩いてるって通報されるかもしれないでしょ? 歩いて5分といえど何が起こるかわからないよ?」
「通報するとしたらアンタでしょうが……」
灯里はじろりと玲士を見、コートを着込んだ。
確かにミノムシっぽく見えなくもないが、仮にも『恋人』に言う言葉か?