悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
<side.玲士>
寒々とした空気が、家具の無くなった室内をひんやりと包み込む。
玲士はぐるりと部屋を見回した。
玲士は大学入学時から7年間、この部屋に住んでいた。
特に可もなく不可もなくといった部屋だったが、いざ去るとなると寂しさも感じる。
家財を全て運び出した部屋は、季節のせいもあるのだろうがひどく寒々しい。
玲士は手にしていた書類を黒いビジネスバッグの中に突っ込んだ。
書類には『面接のご案内』とある。
先週、東京のとある国際会計事務所から届いた書類だ。
書類審査は無事に通り、来週の月曜に面接選考がある。
「東京、か……」
東京に行くのは夏の電機設備展以来だ。
電機設備展の夜、灯里は足を怪我していたにも関わらず玲士が用意した夕飯をとても美味しそうに食べていた。
あの輝く笑顔は玲士の脳裏に今も焼き付いている。
灯里が傍にいてくれるだけで食事というものの意味が違ってくるような気がした。
――――ただ栄養を取るだけではなく、誰かと時間を共有するということの意味。
美味しい料理を一人で食べるより、灯里と食べるコンビニ弁当の方が遥かに美味しい。