悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
「水澤くんってさ、ひょっとして料理が趣味とか?」
思わず聞いた灯里に、玲士は軽く首を振った。
「いや、趣味じゃないよ。むしろ仕事と通じるものがあるね」
「え?」
「限られた時間の中でいかに効率よく作業をこなすか。どの作業をどの時点でやれば、後の作業がスムーズに進むのか」
「……」
「仕事の考え方と同じだよ。マルチタスクをどう処理するかって感じかな」
灯里は思わずぽかんと玲士を見た。
やはり頭のいい人間は考えることが違う。
玲士はテーブルの隅に置いてあった取り分け用の小皿を取り上げ、サラダを手早く分けた。
無言でそれを見ていた灯里だったが、トマトの切れ端が乗ったことに気づきとっさに声を上げた。
「あー……トマトは……」
「なに? お前、トマトだめなの?」
玲士は手を止め、驚いたように顔を上げた。
しばし灯里の顔を見つめた後、首を傾げて口を開く。
「でもお前、トマトソースは大丈夫だよね?」
玲士は春頃に一緒に行ったランチの内容を覚えていたらしい。
その記憶力に驚きながら、灯里は悄然と肩を落とした。