悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
やがて店員がツイン用のケースに指輪を入れて戻ってきた。
中身を確認し、玲士は胸ポケットから財布を出してその中からカードをすっと差し出す。
そのスマートで大人びた仕草に灯里は内心でドキッとした。
けれどあの指輪、値段が書いてなかったような気が……。
灯里はふと横のショーケースに並んでいた指輪に目をやった。
そしてそこに置かれた値札を見た瞬間、カッと目を見開いた。
「……!?」
シンプルで装飾のない、5号のピンキーリングに10万の値段がついている。
ということは、あれ二つだと……。
「……」
灯里はさーっと青ざめた。
灯里の給料の何か月分だろうか?
硬直した灯里の肩を、カウンターから戻ってきた玲士が軽くトントンと叩く。
その手には指輪が入った紙袋を持っている。
――――即断即決。
悪魔らしいと言えば悪魔らしいが……。
「さ、行くよ」
「……っ」
玲士は灯里の腕を掴み、スタスタと歩いていく。
灯里は引きずられるように玲士の後に続いて歩き出した。