悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~

4.始まりの指輪



――――玲士の姿が見えなくなった後。


灯里はデッキから中に入り、玲士が予約してくれた指定席に座った。

鞄を上の棚に置き、玲士が貸してくれたコートを脱ぐ。

コートから漂う甘いウッドノートの香りに胸がジワリと熱くなる。

灯里はコートを胸に抱きしめ、ぎゅっと目を瞑った。

胸に切ない想いが込み上げる。


この3日間で灯里の心は玲士に囚われてしまった。

――――もう、戻れない。

さっきのホームでの玲士の切なげな瞳が脳裏に浮かぶ。


気持ちを整理するまでもなく、灯里は玲士を好きになっていた。

でなければこんなに胸は痛まない……。


玲士は次に会えるのは年明けの15日頃と言っていた。

となると約三週間後だ。


「……っ」


三週間が、今はこんなにも長く思える。

前はこんな風に思ったことなどなかったのに……。


灯里の右手の薬指で指輪が銀色の繊細な輝きを放っている。

――――二人の始まりの証。

灯里は指輪に額を押し付け、ぎゅっと目を瞑った……。


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