悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
2.新しい職場
<side.玲士>
年が明けて、1月。
二週目の週末。
玲士はノートパソコンを片手に社内の廊下を歩いていた。
玲士が入社した国際会計事務所は東京・中央区にあり、20階建のオフィスビルの18階にある。
まだ築年数が浅いため全体的に新しく、フロアも広い。
玲士はその中の『国際管理財務部』というところに配属になった。
国際管理財務部は経営管理事業の下に位置し、管理会計や財務会計のスペシャリストが集まっている。
「繰延税金資産の回収可能性については?」
「日本では収益性の区分に応じた計上可能額算定方法が詳細に決められていますが、IFRSではそのような詳細なルールはありません」
隣を歩く同僚の質問に玲士は澱みなく答えた。
今、玲士は同僚とともに国際会計基準の解釈指針の英語原文の確認作業を行っている。
来年の国際会計基準変更を控え、猫の手も借りたいほどの忙しさだ。
ちなみに同僚は28歳の長谷部という男で、玲士より2年ほど前に中途採用された。
今は玲士と同じ国際管理財務部に所属している。
「そうか、なるほどなー。……ところで水澤、来月イギリスで国際会議があるのは知ってるか?」
「メールで回ってきたのは確認してますが」
「俺、一応行くことになってるんだけど。お前も一緒に行くか? 審議会の最新の情報が手に入るかもしれない」