悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~
「日々勉強中だよ。まだまだ知識が足りないからね」
玲士の口から勉強という言葉が出ると思ってなかった灯里は目を見開いた。
玲士はそんな灯里を見、くすりと笑って続ける。
「おれが国際会計をやってたのは大学の時だから、4年ぶりかな。4年も経つと、会計の世界は法律やら基準やら、けっこう変わるんだよ」
「へぇ……」
「今はその4年のタイムラグを補ってる感じかな。準備期間とでもいうのかな、まだ本調子じゃない感じだね」
と言う玲士の表情はどこか生き生きとしていて、灯里はつい見入ってしまった。
氷の彫像に息が吹き込まれて血が通った感じとでも言うのだろうか、忍村商事にいた時には見たことのなかった表情にドキリとする。
もともと美しい顔に生気が満ちると、とても鮮やかで思わず目を奪われずにはいられない。
やはりまだ、自分は玲士の一面しか知らないらしい。
灯里はコーヒーを一口飲み、口を開いた。
「そういえば今回は、いつまでこっちにいるの?」
「いつまでって……今日の夕方にはもう帰るよ。明日、仕事だからね」
「えっ?」
灯里は目を見開いた。
今日は土曜日なので、明日は休みだと思っていた。