愛を教えて ―番外編―
『おはようございます、ドクター』

『おはよう。どうにも気になって、マリコはどうかしら? ミスター・フジワラはいらっしゃるの?』

『ええ……あの、それがちょっと……今は、なんといいますか』


言葉を濁すソフィだが、ドクターは気にせずに入り込んでくる。


『それはどういうことかしら? わかるように説明してくださる』

『はあ……あの、オーナーが奥様の意識を戻させようとなさいまして』

『そんな、急にそんなこと。まだ三日しか経ってないのよ。焦る気持ちはわかるけれど……薬は副作用の少ないものに替えればいいのよ。効き目はゆっくりだけど……』


そのとき、再び寝室の様子が激しくなった。

四十代の女性ドクターは呆れたように笑い、お手上げのポーズを取る。


『どうやら……治療が始まったようね。まあ、本当に困った旦那様ね』


ドクターは肩をすくめながら廊下に引き返す。


『も、申し訳ありません』

『これではどうしようもないわね。旦那様の治療が終わったら、連絡をくれるように伝えてくださいな。――あなたも大変ね』


そう言って引き上げるドクターを、ソフィは気まずい思いで見送るのだった。


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