愛を教えて ―番外編―
ジェイクは大慌てで服を着てウォッシュルームを飛び出した。あろうことか、ソフィを裸のまま置き去りにして……。


寝室をはじめ、室内はもぬけの殻だった。

ジェイクは信じられない自分の失態に、呆然と立ち尽くす。

そのとき、デスクの上に見慣れぬ白い紙を見つけた。飛びついて目を通すと、それはジェイク宛てのメモだった。


(ランチは妻と一緒に外で取ることにした。君がこのメモをひとりで見ているなら、彼女は今、泣いているだろう。君の行為に愛情がないのなら、あとは弁護士に任せるように……)


ジェイクの心臓が跳ね上がった。

社長はすべてお見通しなのだ。

いや、それ以上に……。ジェイクはメモをデスクに置いたまま、ウォッシュルームに駆け戻った。



ジェイクが飛び込んだ瞬間、ソフィが個室から出て来た。ソフィの目は真っ赤だ。個室の中で泣いていたことがすぐにわかった。

だが、ソフィはジェイクを見るなり気丈にも笑顔を見せる。


『ウォシュレットで洗い流そうとしたんだけど……全部は無理みたい。こんなこと、するつもりはなかったから……ピルは飲んでないの。今から病院に行ってアフターピルをもらってくるわ』

『ちょ、ちょっと待ってくれ! 言い訳はしないよ。でも、遊びじゃないんだ』


ジェイクは自分の愚かさに身の置き所もない。


『いいのよ、無理しないで。私は孤児だし、高校も出てないから。でも、誰とでもこういうことをする女だとは思わないで……それだけ……』


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