愛を教えて ―番外編―
その美月とふたりきり、月光が射し込むだけの薄暗い一室にいる。

しかも今日はクリスマスイブ。あと二時間ほどで日付が変わる――聖夜だ。


ぴったりと体を寄せ合い、身動ぎもせずにいると……結人の中に不思議な感情が込み上げてくる。


「イブにふたりきりなんて……初めてだよね」

「……そうね」

「美月ちゃんは寒くない?」

「こんなときになんだけど、“ちゃん”付けはやめてくれない?」

「でも、昔からそう呼んでるし……父さんも母さんも」

「親はいいのよ。でも、この歳で同級生の男の子に“ちゃん”なんて……寒気がするわ」

「風邪かな? やっぱりここは寒いよね? 毛布とかもらえないかな? 聞いてみようか?」
 

結人がそう言ったとき、背中合わせに縛られている美月が肩越しに振り返り……


「どこの世界に、人質に毛布を寄越す誘拐犯がいるの!? ちょっとは危機感ってものを持ちなさいよっ!」


押し殺した、それでいて怒気を含んだ声に「ご、ごめん」と結人は謝った。


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