愛を教えて ―番外編―
美月は、『勝手にやらせておけば?』と言うが、結人にはとてもそんなことは言えない。

それに、


『工場が潰れて、何もかも失った。全て藤原のせいだ。傘下に入るなら悪いようにはしない、と言いながら……。うちの製造技術を盗みたかっただけなんだ! 技術社員と会社の特許を奪って、工場の連中を切り捨てた。お前たちの父親は鬼だ!』


と、誘拐犯の老人は泣くように叫んだのである。



「だから何? 藤原がどれほどあくどい商売をしているの知らないけど……。パパとはなんの関係もないわ。どうして私が誘拐されなきゃいけないの?」

「それは、ゴメン。でも、美月ちゃんだって子供が殺されたりしたら嫌だろう?」

「あの老人に幼稚園児が殺せるとは思えないわ。それに、“ちゃん”はやめて」

「まあまあ……。もし、藤原が悪事に関わっているなら、他人ごとじゃないよ。クリスマスなんだし、のんびり行こうよ」

「ちょっとでも早く家に帰りたいって言ったのは誰っ!? こんなトコでのんびりしてていい訳ないでしょ!」

「す、すみません」


再び謝る結人であった。


< 114 / 283 >

この作品をシェア

pagetop