愛を教えて ―番外編―
「お前たちの父親はどうなってるんだ!? それどころじゃない、と電話を切りおったぞ!」


誘拐犯の老人が激怒した様子で事務所に入ってくる。


(まあ、そうだろうな)


結人はそんな感想を抱いたが、口にはしなかった。


「あの……三浦さん、僕はいいけど、彼女のロープを解いてあげてくれませんか? それと……毛布を一枚彼女に」


老人は結人の言葉に怪訝そうな顔をする。


「彼女? あんたたちは姉弟じゃないのか?」

「違います。話せば長いことながら……」

「赤の他人よ」


美月は横からスパッと言う。


「それは言い過ぎだろ? 六親等までの血族は親戚になるんだし」


結人が法律を持ち出すと、


「ギリギリ親戚になる程度の遠い関係よ。――誘拐犯のおじいさん、うちのパパは藤原の百分の一程度の会社に雇われているだけのサラリーマンだし、あの無駄に大きいお邸を相続する権利も持ってないの。私を誘拐しても無意味だと思うわ」

「……」「……」


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