愛を教えて ―番外編―
「美月に怪我はないんだな?」

「ないよ。もちろん」

「だったらいい。――早く乗れ」


母には甘い父だが、息子には厳しい。というか、長男に一番厳しいと思うのは、長男のひがみだろうか。

それでも、父親参観や運動会などには全部出席してくれた。長期休暇ごとの家族旅行も必ず計画してくれる。厳しくても、嫌われていると思ったことは一度もない。


母は決して人の悪口を言わない人だ。結人はそんな母が大好きだった。

その母を、大切に大切にする父を見て彼は育った。〝女性を大切にすること〟それは結人の中で、不変のルールとなっている。


「あの……母さんは、まだ?」

「ああ、まだ、だ」

「僕のせい?」

「心配するな、多分もうすぐ……」


そのとき、ヘリの無線に一報が入る。


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