愛を教えて ―番外編―
『おめでとうございます、社長。二十五日の零時一分にご誕生しました。予定より三週間早かったですが、母子ともに問題なしだそうです』


長年父の個人秘書を務める宗の声だった。


「それはよかった。ふたりが無事なら言うことはない。だが、報告はそれだけか?」

『ああ、そうでした。残念ながら……男子バレーボールチームの結成は無理なようです』

「え? 女の子? 妹なわけ?」


父より先に結人が叫んでいた。

これまで『弟か妹ができる』と四回言われたのだ。でも今回は、『弟が増える』と、父に聞こえないように兄弟は言い合っていた。


『はい。結人様もご無事で何よりです。十五歳離れた妹様のご誕生ですよ』


宗に言われ、結人はくすぐったい感動を覚える。

まるで、娘が産まれたと言われたような……。いや、作るような真似もしたことはないが。  


そして隣の父を見上げた瞬間、結人は声を失った。


「……よかった……。万里子に娘を持たせてやれて……本当に……よかった」


父の肩は小刻みに震えていた。


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