愛を教えて ―番外編―
(3)悪い噂
「ご無沙汰しております、万里子様」
万里子が愛実と色々話し合い、外に出たとき後ろから話しかけられた。見覚えのある女性だが咄嗟に思い出せず、言葉に詰まる。
すると、
「七~八年前にF総合企画の秘書室におりました。志賀香織と申します。あの……宗さんの事件のすぐ後に、社長からご推薦いただき系列銀行に移りまして」
香織は少し言いにくそうに言葉を濁す。
そのとき、ようやく万里子は思い出した。
彼女は宗と個人的に付き合いのあった秘書室の女性だ、と。上品で綺麗な女性だったが、どこか他人を寄せ付けない雰囲気を持っていた。バツイチだと聞いていたが……。
そのとき、「ママぁ」と彼女のスカートを引っ張る幼い姉弟が目に入る。
「こちらこそ、あの時は色々大変でしたでしょう? でも、職場を移られて、すぐにご結婚されたんですね」
万里子はひざを折り、幼いふたりに「こんにちは」と笑いかけた。
でも、ふたりとも人見知りをするタイプなのか、母親の後ろに隠れてしまい……万里子は微笑みながら立ち上がった。
万里子が愛実と色々話し合い、外に出たとき後ろから話しかけられた。見覚えのある女性だが咄嗟に思い出せず、言葉に詰まる。
すると、
「七~八年前にF総合企画の秘書室におりました。志賀香織と申します。あの……宗さんの事件のすぐ後に、社長からご推薦いただき系列銀行に移りまして」
香織は少し言いにくそうに言葉を濁す。
そのとき、ようやく万里子は思い出した。
彼女は宗と個人的に付き合いのあった秘書室の女性だ、と。上品で綺麗な女性だったが、どこか他人を寄せ付けない雰囲気を持っていた。バツイチだと聞いていたが……。
そのとき、「ママぁ」と彼女のスカートを引っ張る幼い姉弟が目に入る。
「こちらこそ、あの時は色々大変でしたでしょう? でも、職場を移られて、すぐにご結婚されたんですね」
万里子はひざを折り、幼いふたりに「こんにちは」と笑いかけた。
でも、ふたりとも人見知りをするタイプなのか、母親の後ろに隠れてしまい……万里子は微笑みながら立ち上がった。